製造請負とは?そのメリットと、業者選びのポイント考察
一つひとつの製品を作り上げていく製造業のラインには、実にさまざまな工程があります。それらすべてに自社の教育を施した社員を充てるべきかといえば、そうとは限りません。
既存の製造ラインを生かしつつ、製造工程の一部またはすべてを他社に委託することを「製造請負」といいます。製造請負の活用にはどのようなメリットがあるのか、よりよい業者を選ぶにはどんな点に気を付けるべきか、順に紹介していきます。
- 製造請負とは、工場で発生する業務の一部または全体を業者に委託すること
- 製造請負を活用するとコア業務に集中でき、生産変動にも柔軟に対応できる
- 製造請負の業者を選ぶ際には、コストだけでなく請負立ち上げのハンドリングと教育体制が大切
目次
製造請負とは?
製造請負とは、工場内の生産工程の一部や特定のライン、あるいは工場全体、検品・検査工程、物流など、特定の業務を他の業者に委託することです。組み立て作業だけなどピンポイントでの委託もできますし、業者によっては一定の技術を備えた委託スタッフを用意しているため、高度な設備オペレーションを含めた委託も可能です。
なお弊社日研トータルソーシングには技術と経験を兼ね備えたエンジニアが多数在籍しています。
- 自動車・自動車部品:車体・エアバッグ・エンジン部品・タイヤなど
- 電気機器:AV機器・パソコン・スマートフォン・エアコン・LEDなど
- 電子部品:プリント基板・磁気ヘッド・コンデンサ・センサーなど
- 半導体:半導体素子・シリコン・集積回路・半導体製造装置など
- 液晶:液晶パネル・有機ELパネル・カラーフィルター・ガラス基板など
- 機械:産業用ロボット・工作機械・事務機器・建設用機械など
- 住宅建材:住宅用機器・壁材・天井材・床材・アルミサッシ・合板など
- 食品:菓子・飲料・調味材料・冷凍食品・加工食品など
- 化学:プラスチックフィルム・油脂加工品・医薬品・化粧品など
- その他:で集う・船舶・航空機・リチウムイオン電池・繊維など
製造請負のメリット
製造請負を利用することで得られるメリットはさまざまですが、主に次の4つが挙げられます。
- コア業務の強化
- 生産変動へのフレキシブルな対応
- ローコストオペレーションの実現
- コンプライアンスへの対応
コア業務の強化
製造請負を利用するうえで、この点がもっとも強力なメリットとなるでしょう。新規事業や新製品の開発といった基幹業務、利益に直結する上流工程にあたる「コア業務」を強化すべく、自社内の優れた人材やコストを集中させることで、事業はスケールしていきます。
一方、自社内でこなしている業務の中でも比較的重要度が低い「ノンコア業務」をアウトソースすれば、余剰コストや管理負担を削減できます。
生産変動へのフレキシブルな対応
製造請負を利用すれば、メーカーからの生産変動要請や市場の需要変動への対応も容易になります。増産の必要がある時期だけ業務を委託し、生産量が落ち着く時期には利用しないという選択ができるためです。
これは人件費を固定費から変動費に変えること、製造原価を削減し人材流動化に強い組織へ生まれ変わることを意味します。
一方、業務の拡大時期や短期的な増産への対応をすべて自社内でこなそうとすると、直接雇用する社員の採用を増やさなければならなくなり、固定費は増大します。一方、人員を増やさなければ無理な残業が増え、スタッフに過度な負荷がかかる原因となることもあります。
製造請負であれば、労務管理や雇用調整にかかわる多様な業務も一括してアウトソースできるので、業者とのやり取りだけで済み、採用計画に頭を悩ませる時間を減らせます。
ローコストオペレーションの実現
製造工程の一部を一括してアウトソースすれば、自社内で働くスタッフの正社員比率を抑制できます。
コア業務をこなす正社員の賃金は固定費ですが、請負対象部門のコストは出来高対価として委託することで、変動費と考えることができます。生産量によってある程度フレキシブルに調整が可能なので、固定費を減らすことができ、ローコストオペレーションが実現します。
固定費よりも変動費をフレキシブルに調整する方がコスト削減効果は高まることは、損益分岐点の推移をみるとわかりやすいでしょう。
人件費は固定費の中でも多くの割合を占めるものです。製造請負を活用し人件費を変動費に変えることで固定費を削減できれば、製造原価の削減に直結するメリットが生まれます。
そして人件費を変動費化することによって生産量に合わせた柔軟なコストコントロールが可能になり、不確実性リスクの高い昨今の製造業において、継続的に収益を確保できる体制づくりが実現します。
コンプライアンスへの対応
正社員比率を抑制する方法として人材派遣の活用もありますが、その際に課題となるのが活用期限です。労働者派遣法の定めによると、同じ事業所で派遣労働者が3年を超えて働くことは原則としてできません。
しかし、製造請負ならこの規定の対象とならないので、法令を遵守しつつ、長期的な外部人材の活用が可能です。
失敗しない製造請負先の選び方
製造請負の委託先としてさまざまな業者が考えられますが、委託先はコストだけで選んではいけません。失敗を避けたいなら、「請負立ち上げのハンドリング」によって委託先を選びましょう。
実際に製造請負の現場を立ち上げる際は、さまざまな準備が必要になります。
- 製造工程のオペレーション整備
- 製品のクオリティ管理
- 単価の策定
- 受発注の流れや各種帳票類の整備
これら準備にかかる負荷を削減できる、一気通貫型のソリューションサービスを選ぶことが求められるでしょう。
また、実務においても委託先には能動的な対応が求められます。
- 現場や製品に即した、それぞれの請負導入計画の策定
- 定期ミーティングを通じた現状課題の共有
- 今後起こり得る問題の抽出と、解決するための仕組みづくりの提案
これらを含む立ち上げフローをしっかりと提示してくれる委託先を選択するべきです。
また、製造請負のメリットとして、これまでに発生していた従業員教育コストの削減も見逃せないポイントです。すでに教育がなされた人材を有する請負サービスを活用することで、人的リソースや教育コストの低減を図れるほか、貴重な外部ノウハウの獲得も実現します。
弊社日研トータルソーシングには、専門教育を受けた有資格者が多数在籍しています。ノンコア業務のひとつである設備保全を一例とすると、取引実績は200社以上。設備保全の技術者を年間1,000名以上育成し、保全技能士2級相当の知識や経験を有する専門人材がそろいます。
製造請負先の選び方においては、「請負立ち上げのハンドリング」「教育がなされた人材」の2点に着目してください。
具体的な製造請負の契約
委託先の業者を決定すると、その業者との間に「製造請負契約」を締結します。
これは製品の製造プロセスを他の事業者に委託する際に交わす契約で、請負契約の一種です。製品の製造・完成を目的とした契約となるため、製造の作業そのものを目的とする「業務委託」にはあたりません。契約書のタイトルを「製造業務委託契約」とすると、請負契約ではないという誤解を招くのでご注意ください。
この製造請負契約には、原則として法律上の規制がありません。そのため、契約書を作成しなくても法的には問題ありません。
しかし、このうち「下請法」の対象となる契約では、契約書の作成が必要です。
- 親事業者の資本金が3億1円以上、下請事業者の資本金が3億円以下または個人事業主
- 親事業者の資本金が1千万1円以上、下請事業者の資本金が1千万円以下または個人事業主
製造委託の場合、この2パターンのいずれかに当てはまると、下請法の対象になります。
ただし、製造請負契約では委託内容が複雑になるため、「言った言わない」といったトラブルが起こりがちです。それを防ぐために、原則として製造請負契約書を作成しておくことが望ましいでしょう。
具体的な契約書の内容
製造請負契約書には報酬額や支払期日、支払方法といった、請負契約に伴う基本的な条項を盛り込みます。検品で不良が見つかった場合の責任の所在や、対処方法も明らかにしておきましょう。
それに加え、仕様書や図面などにより製造対象となる製品の規格、品質、性能、形状、サイズなどを詳細に定めなければなりません。これらを定める際には試作を行い、製造工程や完成品の規格などについて認識のずれがないよう共有しておきます。原料・資材の調達、所有権・危険負担の移転時期、製造物責任などについても定めておくことが重要です。
また、製造請負の委託先を検討する際はどうしても、事業構想などの情報を相手企業に伝えることになります。情報漏洩や情報を不正使用されるリスクを防ぐため、契約交渉の前段階で秘密保持契約書を交わしておきましょう。
製造請負を利用する上での注意点
製造請負を利用する際、注意しなければならないのが「請負工程内の作業者への直接指示」です。
工程内の作業者に自社スタッフが直接指示を出すと、実質的には労働者派遣にあたるのに請負契約を締結する「偽装請負」と認定されてしまいます。作業者に指示したい場合は、必ず当該工程の委託先の管理責任者を通しましょう。
また、請負工程は受注側企業のスタッフが独立して行う必要があり、自社スタッフが直接作業を行うことはできません。
「直接指示を出したい」「作業者に指導をしたい」という場合は、人材派遣サービスの利用を検討しましょう。人材派遣スタッフなら、自社スタッフと同じ製造ラインで作業することも可能です。
まとめ:コア業務に注力したい企業は検討の余地あり
製造請負を利用することで、自社のスタッフやコストを新商品の開発・設計やメイン工程といったいわゆる「コア業務」に集中ができるようになります。自社スタッフを最低限にできれば、労務管理業務などの事務作業のスリム化にもつながります。「コア業務に、より力を注ぎ、業績を大きく伸ばすきっかけにしたい」。そう考える企業では、製造請負の導入を検討する価値があるかもしれません。
参考:
ポイント解説下請法|公正取引委員会・中小企業庁
労働者派遣・請負を適切に行うためのガイド|厚生労働省・都道府県労働局
製造請負先の選び方においては、「請負立ち上げのハンドリング」「教育がなされた人材」の2点に着目してください。ノンコア業務のサポート体制を低負荷で整え、円滑なオペレーション構築を実現する、弊社の製造請負につきましては、下記の資料をぜひ一度ご覧ください。