保全技能士とは?資格取得メリットと難易度・合格率・試験内容
工場の製造現場で機械を正常に稼働させるために欠かせない、機械の保全に関わる資格が保全技能士です。
この記事では、知識や技能の客観的な評価に役立つ保全技能士の資格について、取得のメリットや資格の概要、受験資格や難易度などについて紹介していきます。
- 保全技能士とは、機械保全技能検定に合格すると得られる資格
- 機械保全技能士の資格取得をとおして、保全の技能・知識を客観的に証明できる
- 日研のテクノセンターではプログラムを修了すると保全技能士2級相当の知識と経験を習得可能
目次
保全技能士とは
保全技能士とは機械保全技能士のことを指し、機械保全技能検定に合格することで名乗ることが可能となる名称独占資格です。
機械保全技能検定は、国家検定制度である技能検定のひとつです。技能検定は働くうえで必要な技能の習得レベルを評価するもので、130職種の試験が設けられています。
機械保全技能検定は、機械の修理やメンテナンスなど、工場の現場で機械が正常に稼働するように保全を担う職種が対象となり、機械の保全に必要な技能や知識が問われます。
資格取得者のメリット
技能保全検定に合格すると、機械保全技能士を名乗ることが可能となり、名刺に記載することもできます。資格取得を通じて、機械保全に関する技能や知識を習得していることを客観的に証明できるというメリットがあります。
企業によっては資格手当が支給されるほか、昇給や昇進に有利になるなど、キャリアアップにも役立つ資格です。さらに、保全技能士の有資格者は製造業でのニーズが高く、転職に有利にはたらくこともあります。
また、資格取得のための勉強を通じて、機械の保全に必要な基本的な技能を改めて確認することで、生産や保全に関する業務のレベルアップにもつながることもメリットに数えられます。
企業・団体のメリット
企業や団体にとっても、従業員が保全技能士の資格を取得することや有資格者を雇用することにはさまざまなメリットがあります。
まず、保全技能士の有資格者が在籍することで、工場の現場での機械保全のレベルの向上が図れます。また、製造部門や保全部門の高度化が可能となり、信頼性がアップすることもメリットです。
さらに、企業や団体が従業員に対して保全技能士の資格取得を奨励すると、学習意欲の向上を促せます。特に保全技能士の資格取得を人事評価に活用しているケースや、資格手当の支給を制度化しているケースでは、従業員の自己啓発意の向上が図れるなど、モチベーションアップにも効果的です。
資格詳細
製造の現場に欠かせない職種である保全技能士の資格の区分や業務範囲、適性などを紹介していきます。
特級・1級・2級・3級の違い
保全技能士には特級・1級・2級・3級という区分があり、機械保全技能検定は特級を除いて選択作業別に試験が実施されています。1級と2級は機械系保全作業と電気系保全作業、設備診断作業、3級は機械系保全作業と電気系保全作業の選択作業が実施されています。
保全技能士の特級・1級・2級・3級では求められる知識や技能が異なり、想定されている職場階層にも違いがあります。
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- 3級:
学生や新入社員が対象。高校生や新入社員の教育の成果を確認するために利用される傾向があります。 - 2級:
新入社員から中堅社員のオペレーターや保全マンが対象。教育の成果を確認するほか、評価に用いられることもあります。 - 1級:
製造部門や保全部門のリーダーが対象。技術評価を確認するために用いられることが多いです。 - 特級:
管理職が対象。保全分野における監督者の技術評価として役立てる傾向があります。
- 3級:
業務範囲と適性
保全技能士は、工場の機械が正常に稼働するように故障や劣化を予防する設備保全を行う役割を担う、機械や電気回路、異常診断などに関する知識を必要とされる仕事です。具体的には、機械や設備のメンテナンス計画の作成やメンテナンス方法の決定、欠陥の発見、異常の発生時の修理などの対応のほか、機械や設備のデータの収集や解析、判定などを行います。
保全技能士は単にメンテナンスや修理を行うだけではなく、生産部門と保全部門での連携が求められたり、機械メーカーなど外部の企業との打ち合わせを行ったりすることもあります。機械や設備に興味があることはもちろん、一定のコミュニケーション能力がある人に向いている仕事です。
資格取得方法と難易度
保全技能士を取得するための機械保全技能検定は、公益社団法人日本プラントメンテナンス協会が厚生労働大臣指定試験機関として実施しています。
なお、2020年度では、3級は第1回、特級・1級・2級は第2回の日程で実施を予定されていましたが、新型コロナウイルス感染症の影響により、第1回は中止となりました。
各級の2020年度の試験実施期間や申込期間、受験料など、試験の概要を以下にまとめました。
保全技能士の受験資格
保全技能士を取得するための機械保全技能検定には、受験資格が設けられており、級ごとに受験に必要な機械保全に関する実務経験の年数が異なります。
3級は実務経験を問われず、機械保全に関する業務に従事している人やこれから従事しようとしている人であれば、誰でも受験することが可能です。2級は2年以上、1級は7年以上の実務経験が必要です。特級は1級合格後5年以上の実務経験が必要になります。
ただし、1級と2級の機械保全技能検定の受験資格は、工業高校や大学・短大の工学部の卒業、職業訓練の修了など、学歴などによる短縮要件が設けられています。また、2級は3級の合格によって、1級は2級合格後2年以上、3級合格後4年以上の実務経験によって、受験することが可能です。
保全技能士の試験内容
保全技能士を取得するための機械保全技能検定は、いずれの級も学科試験と実技試験が実施されます。学科試験は級によって出題形式に違いがありますが、いずれもマークシート方式です。
学科試験
学科試験の科目は、1級・2級・3級は「機械一般」と「電気一般」「機械保全法一般」「材料一般」「安全衛生」が共通科目で、選択制の科目もあります。3級は「機械系保全法」と「電気系保全法」のいずれか、1級・2級は「設備診断法」を加えた3つから選択します。
特級の科目は「工程管理」と「作業管理」「品質管理」「原価管理」「安全衛生管理及び環境の保全」「作業指導」「設備管理」「機械保全に関する現場技術」です。
実技試験
実技試験は1級・2級は機械系保全作業と電気系保全作業、設備診断作業、3級は機械系保全作業と電気系保全作業の作業ごとに実施されます。
機械系保全作業と設備診断作業は、資料などを見て判別や判断などを行う判断等試験で、マークシート方式での解答です。電気系保全作業は製作等作業試験で、実際に回路組立作業や修復作業を行うほか、マークシート方式で解答する問題も出題されます。
特級は計画立案等作業試験がマークシート方式で実施され、現場における課題を表や図、グラフ、文章などを用いて提示して、計画立案や予測などの技能を測る問題が出題されます。
保全技能士の難易度と合格ライン・合格率
機械保全技能検定の合格基準は各級とも共通です。学科試験は加点法が採用され100点満点中65点以上で合格となり、実技試験は減点法で41点以上の減点がなければ合格です。
2019年度の合格率は、特級17.6%、1級21.6%、2級30.9%、3級で71.0%でした。3級は難易度が低く挑戦しやすいですが、級が上がるほど事前の対策が必要となり、特級・1級は難易度が高いといえます。
まとめ
保全技能士の資格取得を通じて、機械保全に関する技能や知識の向上が期待できます。また企業が保全技能士の有資格者を確保することは、製造部門や保全部門のレベルアップにもつながっていきます。
なお、弊社テクノセンターでは保全に関する研修を実施しています。弊社プログラムを修了すると、保全技能士の2級相当の知識と経験を得ることが可能です。