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業界トレンド - 自動車

LiDARとは|センサーの仕組みと原理から自動運転車やスマホなど活用事例を考察

LiDARは、車の自動運転などの分野で注目されているリモートセンシング技術です。遠く離れた対象物との距離などを測定できるLiDARの技術は、幅広い産業にて応用が進んでおり、いまでは産業用ロボットやドローン、さらにスマートフォンなど日常に根差したデバイスにも活用されています。

本記事では、LiDARの原理や仕組みから、具体的な活用事例、メーカーの動向や世界シェアについて解説します。

LiDARとは
  • LiDARは、レーザー光を照射し反射される時間差から、対象物との距離などを測定するリモートセンシング技術
  • 自動運転車への搭載のほか、ドローンや産業用ロボット、スマートフォンアプリなど多様な分野に応用される
  • 市場規模は拡大を続けており、先行する米国や中国に対し、国内企業やベンチャーも追随する

目次

    LiDARとは

    LiDAR(読み方:ライダー)とは、離れた場所にある対象物にレーザー光を照射し、その反射光を光センサーで収集した情報から、対象物との距離や対象物の形状などを測定するリモートセンシング技術です。

    なおLiDARは「Light Detection And Ranging」の略称であり、直訳すると「光による検知と測距」という意味になります。

    LiDARの原理と仕組み

    LiDARの原理と仕組み

    LiDARは対象物にレーザー光を照射し、跳ね返ってきた反射光をセンサーで検出して、対象物までの距離や形状を測定する仕組みです。

    ポイントは「レーザー光」を用いることです。レーザー光には、赤外線や近赤外線、紫外線といった不可視光線が用いられており、光拘束密度の高さが特徴となります。そのため、LiDARは電波を用いるレーダーと比較して、位置や形状などを高精度で検出できる点が優位性となっているのです。

    LiDARは距離の測定方法によって、主に次の2種類に分類されます。

    • TOF(飛行時間)方式
    • FMCW(周波数連続変調)方式

    TOF方式

    TOFは「Time of Flight」の略称で、「飛行時間」を意味します。TOF方式のLiDARは、対象物に対してレーザー光を高速で繰り返し発光する「パルス照射」を経て、対象物に反射されて戻ってくる光を検出。レーザー光が反射され戻ってくるまでの時間から、対象物との距離を算出する仕組みです。

    TOF方式のLiDARは、半導体レーザーが発光し、受光部に光センサーが備えられている比較的単純な構造であり、部品点数の少なさが特徴です。長距離を含む幅広い距離に対応し、対象物の素材や色を問わず、安定して測定できるメリットがあります。

    TOF方式の技術は車の自動運転をはじめ、ドローンや産業用ロボット、駅のホームドア、自動ドア、ゴルフの距離計などのほか、タブレットやスマートフォンにも応用されています。

    FMCW方式

    FMCWは「Frequency Modulated Continuous Wave」の略称で、「周波数連続変調」を意味します。FMCW方式のLiDARでは、レーザー光の周波数を変調させながら連続して対象物に照射し、反射され戻ってきた受信波の周波数から、対象物との距離を算出する仕組みです。

    FMCW方式は、車の自動運転への活用も期待される高精度なLiDARとして注目を集めていますが、コスト面などの課題から実用化には至っていません。

    iPhoneにも搭載されているLiDARの活用事例

    LiDARは車の自動運転のほか、スマートフォンへの搭載やARアプリ、ロボットアームによるピッキング、ドローンによる測量など、幅広い分野にて技術が活用されています。

    自動運転車

    自動運転車

    自動運転車に求められる最重要ともいえる技術革新は、安全性の担保です。衝突など事故を回避する安全な自動運転環境の実現には、周囲の車両や歩行者、道路上の障害物、建物などを検知し、対象物までの距離や位置関係を高精度で把握するシステムが欠かせません。

    自動運転車に搭載されたLiDARは、前方車両などの対象物に向けて上下左右からレーザー光を照射し、反射光を検出して距離を計測します。その計測データから3Dデータを生成し、障害物を検知する仕組みが採用されています。

    LiDARとミリ波レーダーの違い

    自動運転車に搭載されているリモートセンシング技術は、LiDARだけではありません。自動ブレーキなどの先進運転システム(ADAS)には、ミリ波レーダーも利用されています。

     

    この「ミリ波」とは、30~300GHzの高い周波帯の電波のことです。ミリ波レーダーは、シンセサイザーで生成したミリ波の信号を送信用のTXアンテナから対象物に発信し、反射して戻ってきた電波を受信用のRXアンテナで受信します。その送信情報と受信情報から、対象物との距離を算出する仕組みです。

    このように、距離測定の原理としてはLiDARとミリ波レーダーでは類似性が認められます。しかし、ミリ波レーダーは前方車両との距離計測は可能ですが、対象物の正確な位置や形状の把握は困難です。一方、LiDARは3Dデータから前方車両や歩行者などの形状や位置関係、距離までを正確に検知できます。

    自動運転の実現には、前方車両との距離だけではなく、車線変更を行う車両や道路を横断する歩行者、周辺の建物など、刻々と変化する環境情報をリアルタイムで把握できなければいけません。そのため、ミリ波レーダーを用いた自動運転は、高速道路など道路状況の変化が少ない場所に限定されています

    LiDARは完全自動運転を実現するためのコア技術として位置づけられます。

    LiDARとミリ波レーダー・カメラの3方式

    現状では、LiDARのセンシング技術のみで完全自動運転を実現するための情報取得は困難であり、カメラとミリ波レーダーを組み合わせた3つの技術が必要とされています。具体的な例としては、前方にカメラ、前方と後方・側方にLiDAR、前方と後方にミリ波レーダーと、複数の装置を組み合わせる形です。

    LiDARとミリ波レーダー、カメラにはそれぞれ以下のようなメリットとデメリットがあり、それぞれが補完し合っている関係性です。

     

      メリット デメリット
    LiDAR
    • 広範囲にわたって距離や位置、形状に関する高精度な三次元データを取得できる
    • 悪天候時に検出能力が低下する可能性がある
    • 現状では高額なため、複数台のLiDARの取り付けは現実的ではない

    ミリ波
    レーダー

    • 天候に左右されず、夜間でも正確に対象物の距離を計測できる
    • LiDARより安価で、搭載が現実的
    • 段ボールなど反射率の低い物や小さな物、近い距離の物は、検出が困難
    カメラ
    • 車両や歩行者のほか、道路標識や信号機の色も識別できる
    • 正確な形状や位置の検出は困難
    • 夜間や霧が発生したとき、逆光の環境などでは、対象物の識別が困難

    ARアプリなどスマートフォンでの活用

    LiDARはスマートフォンにも活用されており、一部のAndroid機種やiPhone12以降のProシリーズ、さらに2020年以降に発売されたiPad Proにも搭載されています。

    iPhoneなどでは、LiDARスキャナから赤外線レーザー光がドッド状に照射され、対象物との距離を把握する仕組みが採用されています。たとえば人間の身長などを計測できる「計測」アプリケーションは、LiDARのわかりやすい活用事例です。

    また、LiDARはARのコア技術としても注目されています。ARアプリを介して現実世界に仮想オブジェクトを配置する機能などは、LiDARの技術に立脚するものです。

    産業用ロボット・ピッキングロボット

    物流倉庫などで用いられるピッキングロボットは、制御システムによって倉庫内の物品への衝突を回避しながら移動し、カメラやレーザーセンサーによってピッキングの対象商品の形状や位置を把握し、ロボットアームで商品をつかむという仕組みが一般的です。

    AMR(自律走行搬送ロボット)などでは、ロボットの目の役割を担うセンサーとして、LiDARの技術が活用されています。

     

    ドローン

    ドローン

    LiDARを搭載したドローンは、周辺状況を高精度に把握できることが大きな特徴です。主に地形データの取得や地上までの距離の測定に用いられています。

    地表データの取得にあたり、これまでのドローン搭載カメラによる空撮では、山間部の樹木が生い茂るエリアなどの地表の測量は困難でした。そのため空撮による画像データと、地上型レーザースキャナーで取得した地表面の測量データを合わせて解析する作業工程が発生していたのです。

    しかしドローンにLiDARのレーザースキャナーを搭載することで、山間部などの測量データにおいても、取得が従来よりも容易となりました。また、土木工事現場の測量に用いられるドローンには、わずか数ミリ単位の誤差という高精度LiDARが搭載されています。このほかにも、送電線の検査などインフラ点検領域でも、LiDARを搭載したドローンが活用されています。

    測量・マッピング

    LiDARを自動車や航空機、前述したドローンに搭載することで、移動したエリアの精密な地形データを取得できます。LiDARを航空機に搭載すれば、1回の飛行につき3〜4km程度と広範なエリアの測量も可能です。

    また、山間部の地表面の統計データのほか、沿岸部の水深の測量にもLiDARの技術が用いられています。

    LiDARメーカーと世界シェア

    LiDARメーカーと世界シェア

    LiDARは世界的に市場の拡大が見込まれている成長分野です。米国企業が強さを見せる一方で、車載用LiDARの分野では中国企業が席巻しています。

    拡大を続けるLiDAR市場

    2023年におけるLiDARの市場価値は約65億4,700万米ドルと推測されていますが、2033年には約516億6,600万米ドルにまで達すると見込まれています。これは、2023~2033年のCAGR(年平均成長率)で評価すると25.8%にもおよぶ高水準です。

    売上高ランキング上位を占めるメーカー群

    LiDARの世界市場では、以下のような米国企業が強さを見せており、各社の決算資料を顧みても、売上高ランキングの上位を占めていると見られます

    • Velodyne Lidar社
    • Luminar Technologi社
    • Ouster社

    なお、2023年2月には、Velodyne Lidar社とOuster社が、LiDAR事業での財務基盤の強化などを目的に合併しました。販売チャネルの拡充や技術、知的財産権の一本化などがなされた結果、今後のLiDARの普及もさらに推進されると見込まれます。

    一方、車載用LiDARに限定すると、2022年時点にて中国メーカーの製品が44%を占めていると、中国の調査会社である潮電智庫から報告されています。

    車載用LiDARの世界市場における売上高ランキングでも、1位に禾賽科技、2位に速騰聚創と、上位2位を中国企業が独占している形です。車載用LiDAR市場においては、中国企業が急成長を遂げている情勢です。

    国内メーカーや新興企業も追随

    国内メーカーの動きに目を向けると、トヨタ自動車が2021年4月に発売したLEXUS「LS」と「MIRAI」モデルに搭載された高度運転支援技術「Advanced Drive」向けの製品として、トヨタグループのデンソーの製品が採用されています。これには車両や道路の形状の検知を行うLiDARが含まれています。

    LiDARなどセンサー開発に着手しているベンチャー企業は国内外に数多くあり、開発競争は過熱しています。ベンチャー企業はトヨタ自動車などの大手自動車メーカーに自社製品が採用されることが、売上や事業成長に大きな影響をもたらすと見られます。

    まとめ

    LiDARは、自動運転車やARなど、これからのイノベーションを牽引する分野のキーテクノロジーとして注目されているリモートセンシング技術です。今後さらに市場規模は拡大していくでしょう。

    一方、完全自動運転の実現などに求められるハイエンドモデルのLiDARはいまだ高額であるため、実用化に向けた課題にもなっています。車載用LiDARの小型化・低価格化に関する技術開発の進行や、応用分野のさらなる拡充が期待されます。

    この記事を書いた人

    Nikken→Tsunagu編集部

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