KYT(危険予知訓練)とは?トレーニングの例題と解答・4ラウンド法での進め方
製造業や工場の現場には、職場環境や作業中の行動に労働災害を誘発しかねないさまざまな危険要因が潜んでいます。
一歩間違えると重大な事故が起きかねない、危険な場面に出くわしたことはないでしょうか?
労働災害を防止して安全な職場風土を構築していくための手法のひとつに、KYTトレーニング(危険予知訓練)があります。
KYTとは何か、実践の目的や効果について解説したうえで、危険予知トレーニングの例題と解答、具体的な進め方を紹介していきます。
- KYT(危険予知訓練)とは、危険な現象とその要因に対する感受性を高め、解決していく能力を向上させるための訓練
- 労働災害の原因の大半を占めているのは不安全な行動
- KYTはKYT4ラウンド法などを用いて進めていく
目次
KYT(危険予知訓練)とは
KYT(危険予知訓練)とは、作業者自身が職場や作業中に潜む危険な現象や有害な現象を引き起こす危険要因に対する感受性を高め、解決していく能力を向上させるための訓練です。
なおKYTの言葉は、危険の「K」、予知の「Y」、トレーニングの「T」の頭文字を組み合わせたものです。
KYTトレーニング実践の目的と効果
KYTトレーニングは労働災害を防止する目的で行われ、危険のポイントと行動目標を指差し呼称で顕在化するといった、安全確認手法を確実に実行できるようにするための訓練でもあります。また、KYTの導入によって職場の安全に対する意識や5Sの徹底、チームワーク向上などの効果が期待できます。
労働災害の防止
労働災害が起こる原因は、不安全な行動と不安全な状態に分けられます。このうち、労働災害の原因の大半を占めているのは不安全な行動で、ヒューマンエラーとリスクテイキングに分類できます。
- ヒューマンエラー:人為的ミスとも呼ばれるものです。聞き間違いや見間違い、勘違い、あるいはうっかりぼんやりしていたといった、不注意による意図しない行動によって起こります。
- リスクテイキング:あえて危険な行動を選択してしまうことをいいます。慣れてきて油断したことで決められた作業手順を逸脱する、作業の労力を減らすために安全確認作業を怠るといった行為が該当します。
KYTは、ヒューマンエラーやリスクテイキングを起こしやすい心理状態を把握することで、労働災害を防ぐ目的で実施するものです。
安全確認手法としての訓練
職場や作業中の危険を発見する能力を高めるには、危険に関する感受性を高め、安全を確認するための手法を身につけることが重要です。
そこで、日常的に安全確認を実践するために行う訓練がKYTとなり、次の2つの意義があります。
- 危険情報の刷り込み
- 危険のポイントと行動目標を指差し呼称で顕在化
危険情報の刷り込みを行うのは、人間は潜在意識による習慣に従って、ほとんどの行動を無意識に判断して行っているためです。そこで、潜在意識に危険情報を刷り込んでおくことで、自然に危険を意識するという新しい習慣が根付いていきます。
さらに、KYTの実施によって、危険のポイントと行動目標を叩き込むことで、作業中の要所要所で無意識に指差し呼称によって危険要因や対処策を顕在化する形で、安全確認を実施するようになります。
KYTトレーニングの導入効果
KYTトレーニングの導入によって期待されるのは次に挙げる効果です。
- 危険を予知する能力が向上し、日常の作業、行動が注意深くなる。
- 安全を自主的に(自分の問題として)考えるようになる。
- ミーティングでの発言が活発になり、チームワークが向上する。
- 問題解決能力やまとめる能力が向上し、リーダーシップが育成される。
- 気楽に注意しあえる職場風土、考える安全、先取り安全の職場気風を作っていける。
KYTの導入によって、作業者の危険要因に対する感受性が向上するだけではなく、自主性を持って安全について意識しながら、作業を行うことが期待できます。
また、ミーティングでも積極的に発言し、安全面などでお互いに気楽に注意し合うようになり、さらには職場の雰囲気も明るくなるなど、職場風土の向上も図れる取り組みです。KYTは安全を先取りしてチームワーク良く働く職場を構築する効果があります。
KYTトレーニングの進め方・KYT4ラウンド法
KYTの進め方には、KYT4ラウンド法という代表的な手法があります。KYT4ラウンド法では、1Rから4Rまでの段階を踏んで進めていきます。
KYT4ラウンド法による訓練は、一人ひとりが意見を出しやすいように5~6人程度のチームで行うのが基本です。事前に司会・進行役となるリーダーと書記を決めておきます。
リーダーはKYTを始める前に、危険性に対する感受性を高めて、労働災害を防止するために実施することを説明し、メンバーが積極的に発言するように求めます。
1R:事実をつかむ
1Rはどんな危険が潜んでいるのか、事実をつかむ現状把握の段階です。KYT訓練用のイラストシート、または実際の職場や作業をもとに、潜んでいる危険要因について話し合います。そして、危険要因によってどんな危険な現象が起こるか想定していきます。
1Rでは、メンバーから出た意見をすべて挙げてもらい、紙に書いていきます。実際に事故が起きるかどうかではなく、危険だと思われることをすべて挙げていくことが大切です。
2R:本質〈原因〉をさぐる
2Rは本質(原因)をさぐる段階になります。1Rで挙げられた意見の中から話し合いによって、重要と思われる項目に赤で〇をつけます。そして、〇の中で最も危険だと思われる要因に赤で◎をつけてアンダーラインを引きます。
◎の項目を決める際にメンバーの意見が割れた場合、多数決で決めるのは望ましくありません。話し合いによってメンバー全員が納得のできるものを導きだしていくのがポイントです。
そして、◎の項目を危険のポイントとして、「~なので~になる ヨシ!」という形で、メンバー全員で指差し唱和をして確認します。
3R:対策をたてる
3Rは危険ポイントに対して対策をたてる段階です。2Rで◎をつけた危険のポイントを解決するための具体的な対策について、メンバー全員で意見を出し合います。
リーダーが「あなたならどうするか」、一人ひとりに意見を聞いていきましょう。
4R:行動計画を決める
最後の4Rは危険ポイントに対する行動計画を決める目標設定の段階です。3Rで出された対策をもとにメンバーで話し合い、全員の合意を得て重点実施項目を決めて、赤で※をつけます。次に、重点実施項目を実行するためのチーム行動目標を設定します。
そして、メンバー全員でチーム行動目標を「~するときは(~のときは)~を~して~しよう ヨシ!」と、指差し唱和を行って確認します。
危険予知トレーニングの例題と解答
KYTの例題となるイラストシートは、一般社団法人安全衛生マネジメント協会などで配布されています。イラストによる例題と解答例を数点紹介していきます。
例題と解答:ドラム缶吊り油補
クレーンを使ってワイヤーでドラム缶を吊って油補給を行う際には、ワイヤーや緩む、あるいは切れることや、ドラム缶からこぼれた油による危険が起こることが考えられます。
例題と解答:コンベヤーで製品整理
製品を台にしているため不安定であり、高く製品を積み上げていることによって、崩れるリスクもあります。また、動いてあるベルトコンベヤーから重いものをとる、床に製品を置いておくことにも危険が潜んでいます。
例題と解答:制御盤台車積み
制御盤を台車に載せる際に不安定になることや制御盤を素手で運ぶことによって、危険な現象が起こる可能性があります。
まとめ
労働災害を招く要因の多くは、ヒューマンエラーやリスクテイキングといった不安全な行動です。KYTの導入によって、作業者の安全確認に対する自主性を養い、安全を先取りしてチームワークよく作業を進めていく職場風土が構築されることが期待できます。
なお当社では、登録人材に向けてKYTなどの教育訓練を実施しています。安全衛生に関する知識や実務経験を有する人材のアウトソース活用を検討されている企業様は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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