製造業における「教育」がうまくいかない理由とは
作業者の高齢化が進む製造業では、若手人材の育成ができていないという課題を抱えている企業は少なくありません。
人材確保は生産体制に直結する問題であり、育成にあたっては体系的な教育の実施が求められます。製造業において教育がうまくいかない理由と、機能させるための解決策としてのアウトソース活用の方法について紹介していきます。
- 製造業では属人化やマネジメント体制の不足、高齢化などの問題から、若手の育成に課題を抱える企業が多い
- 「頭数合わせ」のための外注は問題解決につながらない
- 高度な教育を受けた人材を請負の形で活用し、ノウハウを得る方法も
目次
製造業における「教育」がうまくいかない理由
少子高齢化が進むなか、製造業では後進となる作業者の教育がうまくいっていない企業が目立ちます。
慢性的な人材不足をはじめ、長年の経験によって培われてきた熟練の技術やナレッジの伝承が進んでいないこと、教育体制自体のマネジメントが行われていないことなどが、その理由として挙げられます。
「技能人材」の不足
製造業では、熟練の作業者が長年の経験や勘をもとに作業を行っているケースが少なくありません。作業がマニュアル化されておらず、「○○さんでなければやり方がわからない」「○○さんしかできない」といった形で、作業が属人化されているような状況が該当します。
従来であれば、こうした熟練の作業者の長年の経験によるノウハウは次の世代へと引き継がれてきていました。しかし、少子高齢化に起因する生産労働人口の減少によって、若手人材が確保できないことから、こうした技術伝承が滞り、技能人材が不足する事態となっています。
昨今ではIoTの活用によって製造業でも業務の効率化が進められており、そこに活路を見出すこともできますが、導入を進めるための人材やコストの問題などから、デジタル化は簡単に取り入れられるものではありません。
マネジメントの未整備
製造業で人材育成がうまくいかない要因には、教育に関するマネジメント体制の未整備も挙げられます。製造業の現場に向けて、業務に必要な知識や技術を体系的に身につけていけるような教育体制を構築しているような企業は、ごく一部に限られているのが実情です。
座学とOJTを組み合わせた体系的なカリキュラムがあると、人材育成を効率よく進めることができます。しかし、多くの製造業の企業では部分的な教育しか行っていない状況であり、OJTという名目で実際は「見て覚える」に依存した教育体制から脱却できていないといったケースも目立ちます。
見て覚えるといった形では人材育成に時間がかかります。製造業の高度化と人手不足の深刻化が進む、いまの時代では通用しないフローでしょう。現場任せではなく会社として、製造の現場で段階的に技術を習得していけるようなナレッジマネジメントの整備が求められているのです。
「デジタル人材」の不足と高齢化
製造業で若手人材の確保が難しく、作業者の高齢化が進んでいるのは、「3K職場」のイメージが払しょくされていないことも背景にあります。
製造業は3Kと呼ばれる「きつい」「汚い」「危険」というイメージを持たれがちです。実情とは乖離が大きいケースもあるものの、3Kのマイナスイメージから若手人材が入ってこない、あるいは入ってきてもすぐに辞めてしまうことが、作業者の高齢化が進む要因となっているのです。
若手人材が不足し組織の新陳代謝が滞ってしまうと、いま求められるデジタル人材の確保はますます難しいものになるでしょう。
教育環境の未整備は「人材不足」に起因する
製造業で技能人材が不足しているという状況下において、教育環境が十分に整えられていないという現状は、さらなる人材不足を招く要因となります。しかし、マネジメント人材も不足しているため、座学とOJTによる体系的な教育体制の整備を進めていくこと自体が難しいという実情もあります。
さらに、3Kのイメージから次世代の人材が集まりにくい、IoTの導入によって作業効率化を進めようにもデジタル人材が不足しているなど、人材不足に起因して、ますます人手不足に拍車がかかりかねない状況です。こうした各レイヤーの人材不足が、教育環境の拡充をより難しくしているのです。
「教育」の課題打破を念頭に置いた人材アウトソース
人材不足に起因する教育環境の未整備という課題を打破するには、アウトソーシングを活用する方法があります。従来は、アウトソースの活用は「頭数合わせ」というイメージがあったかもしれませんが、ここでは教育を受けた「専門人材」の登用が鍵となります。
「人材不足をアウトソーシングで補填」では教育の問題は解消されない
人材不足を単にアウトソースで補填するだけでは、教育の問題を本質的に解消することはできません。すでに研修を積み教育がなされた専門人材を登用しなければ、自社で外部人材の教育やマネジメントをするための人材が必要となり、堂々巡りとなりかねないのです。また、外部人材を育てたとしても、自社の人材としての経営資源になることはありません。
頭数をそろえるために外部人材を活用するのではなく、すでに教育された専門人材を活用する方向に転換するという選択肢を検討すべきです。
請負の活用で外部ノウハウを導入
製造業で外部人材を活用するにあたっては、請負という方法も向いています。
請負は専門的なスキルを持つ人材が委託された業務を担い、成果物に対して報酬を支払う形となるため、教育コストはかかりません。また、請負会社の作業者に対して、指揮命令をするのは請負会社のため、マネジメントを行う必要もありません。
委託した業務に関しても、定期的な報告やレポートの提出といった形で情報を共有することで、外部のノウハウを自社に取り入れることができます。
コア業務とノンコア業務の切り分け
請負などのアウトソースを活用するにあたっては、コア業務とノンコア業務を切り分けることが大切です。
コア業務とは、自社の利益を生み出すための上流工程です。具体的には新規事業の策定や新製品の開発、生産計画の策定といった業務が該当し、自社の人材を集中させるべき業務になります。
一方で、加工や組立、検査、設備保全といった実務を担うノンコア業務は定型業務のため、アウトソースを活用しやすい分野です。
アウトソースを活用するべき業務を適切に切り分けることで、自社の限られた人材をより有効に活用することができます。
ノンコア業務のアウトソース
自社での教育体制の構築が難しい状況であれば、ナレッジを有するアウトソースを活用することで、必要な人材の確保が可能となります。また、請負という形で外部人材を活用することで、外部のノウハウを取り入れられることも期待できます。
アウトソースの活用にあたってはコア業とノンコア業務を切り分けて、ノンコア業務を委託するのが基本です。ただし、製造業は高度化しているため、教育を受けた専門人材を登用することが大切です。生産設備の高度化が進む昨今では、保全業務や製造装置・物流装置運用の分野における専門人材が必要とされています。
保全業務のアウトソース
製造業ではリードタイムの短縮が求められている傾向にあり、生産設備の故障によるダウンタイムの発生は、生産計画に大きな影響を及ぼしかねません。適切に保全活動を実施することが生産設備の安定的な稼働につながるため、設備保全のクオリティは重視するべき点です。
一方で、オートメーション化などによって生産設備が高度化していることから、設備保全には専門性が求められています。
日研トータルソーシングではテクノセンターにて研修を実施し、機械保全技能士2級相当の設備保全に関する専門知識を身につけた人材を配属しています。また、機械保全技能士や自主保全士の有資格者が多数在籍しています。
DX推進を支える製造装置・物流装置運用の専門人材確保
DX推進を支える製造装置・物流装置の安定的な稼働は、製品の安定的な供給に大きく関わっています。
個々の製造装置や物流装置の不具合による稼働率の低下が、工場や物流センター全体の稼働率の低下を招くこともあります。自動倉庫を導入している場合は、不具合によって出荷ができないという事態を招くことも考えられます。製造装置や物流装置の安定的な稼働には、定期メンテナンスが欠かせません。
日研トータルソーシングでは、職業訓練校にも認定されている自社研修施設のテクノセンターで実機を用いた実践的な研修を実施。産業用ロボットや協働ロボット、マテハン機器に特化した設備保全の専門人材を育成し、定期メンテナンスを担当する技術者として派遣しています。
まとめ
製造業では少子高齢化による人手不足から、熟練の作業者からの技能継承が進まず、体系的な教育体制が整っていないという実情もあります。そこで、コア業務とノンコア業務を切り分けて、ノンコア業務はアウトソースを活用。限られた人材の有効活用を推進すべきでしょう。
日研トータルソーシングでは、設備保全の専門的な教育を受けた人材を配属しています。また、高度な知識が求められるような製造装置・物流装置運用の分野では、38日間もの研修を修了した人材を配属しています。専門性のある人材を確保する方法として、日研トータルソーシングのアウトソースの活用をぜひご検討ください。
弊社では、設備保全に関する人材サービスを展開しています。充実した教育カリキュラムによる高い専門スキルを持った人材育成に注力し、保全研修の外販実績も豊富です。
設備保全業務の人材不足解消に向けた、弊社独自の取り組みをまとめた資料もご用意しています。アウトソーシングをご検討されている企業の皆様は、ぜひ御覧ください。